なつこん

d_545881 「センセイ？ 放課後、お勉強を見てもらいたいんですけど」授業の終わりに駆け寄ってきた生徒『杏川あんず』のそんな言葉。教師と生徒との何気ない会話。けれど、私と彼女の間の中でそれは、『放課後のお楽しみ』のサインだった。「ええ、良いわよ。少し遅くなるかもしれないけれど」思わず零れてしまいそうな笑みを必死で隠しつつ、彼女の問いに答える。「は…

d_545891 「センパイ？ いつも私のこと、ちらちら見てますよね？」クロッキー帳の上をペンが走る音に混じって聞こえてきた言葉。表情には出さなかったけれど口から心臓が飛び出してしまいそうになった。……彼女は一心不乱にクロッキー帳に向き合っていて、私の視線なんて1ミリも感じていないと思っていたから。何か言い訳をしなきゃ。何でも良いから言い訳を。西日が…

d_545907 この空の下、どこにでもいるような少女たちの夏。どこにでもあるような町の、どこにでもあるような学校の、どこにでもいるような女の子たちの、どこにでもあるよう夏。いつもと同じ通学路、いつもと同じ笑顔に囲まれて、いつもと同じ速さで。少女たちの織り成す、いつもと変わらない――たったひとつだけの夏。それはきっと、触れてみたくなる、少女たちの恋のお…